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勝手に最遊記

勝手に最遊記

ACCIDENT 2―4

落ち葉をカサカサと踏み分けて、悟浄と潤は薪になりそうな小枝を探す。

『コッチも・・・秋も終わりなんだぁ。』紅葉も終わりの木々の色が、少し淋しい。

「あ。コレ良さそう。」潤が小枝を見付けると、「お?イイんじゃねー?」さっと悟浄が拾い上げる。
「私も持つってば。」「イーからイーから。女の子の手を汚したくないんだってv」ニヤッと口角を上げた。
・・・ぅひゃっ・・・なんで軽く言えちゃうのかな。(エロ河童だから?)

悟浄は決して潤に薪を持たすような事をせず、どんどん腕に抱えていく。せめて良い小枝を見付けようと
潤は辺りを見回しながら、少し悟浄と離れた場所へと足を進めた。

「わぁ・・・・。」切り立った崖の近くへと出て来た。
遠く彼方の地平線に、大きな夕日が目の前でゆっくりと沈んでいく。微妙に色彩の違う雲。
鳥が黒い影となって空を流れて行く。オレンジ色に染まった景色は、今まで見た事がない程に美しい。

悟空なら“オレンジジュースみたい”とかって言うんだっけ。クスッと笑みが零れた。
髪をかき乱していく風が、すこし冷たさを含んでいる。悟浄の所に戻ろうと、踵を返した潤の目に

「まっ・・・またっ・・・。」妖怪達が、色々な武器を手に立って居た。しかも大勢っ!!
『何十人居るのよぉ!』逃げだそうと周りを見回すが、背後は切り立った崖。目の前は何十人の妖怪。
どないせぇっちゅーんじゃぁ!!!・・・恐怖よりも怒りが勝っている。

「くくくっ・・・。こんな所で、美味そうなニンゲンが居るなんてなぁ。」涎出してるよっ!
「しかし小柄だぜ?みんなで喰ったら腹の足しにもなりゃしねー。」でしょう?止めとけばっ!?
「じゃ、早いモノ勝ちってコトで。最初に喰い殺したヤツが腹一杯喰うってのは?」賞品じゃないって!

「賛成だっ!!」―――――――――途端に、妖怪達が一斉に潤に向かって飛びかかって来るっ・・
「・・・・・っ!!」叫び声も出ない。目を閉じて・・・・・「潤っ!!」 シュパァァンッ――――

「・・・・あ。」潤の目に、バラバラになった肉塊が、落ちていく。――――キイィィンッ
ザアシュウッザシュッ・・・・鋭い金属音と共に、妖怪達が次から次へと倒れていく。

「悟浄・・・。」錫杖を抱えた悟浄が、妖怪を踏みつけながら歩いて来る。
「悪りぃな。恐い目に遭わせちまって。」バツの悪そうな笑顔を潤に向けた。
「ううん・・・ありがと・・・。」ヘナヘナと座り込む潤。「オイオイ。大丈夫かぁ?」

「あはは・・・腰、抜けた・・・。」それでも泣き出さないのは“慣れた”証拠なの?イヤだなぁ。
そんなコトを思ってると「ほぇ?」ナゼカ悟浄が座り込んで背中を向けている。「悟浄?」

「腰、抜けたんだろ?おぶってやるからサv」「えええええっ!?イイイイイイよーっ!?」狼狽える潤。
「しょうがねージャン?歩けないんだろ?俺、この薪も持ってかなきゃなんねーし。」
紐でまとめた薪を見せながら、「ホントはお姫様抱っこしたいんだけどーv」等とニヤニヤしながら言う。
「おっ・・おんぶで、お願いします・・・。」真っ赤になりながら、呟いた。

来た道を、悟浄におんぶされながら戻る潤。
「あのさ、重くない?悟浄・・。」「んあ?ゼーンゼン!潤はもう少し喰った方がイイんでない?」
鼻歌混じりに軽やかに歩いていく悟浄。
「そ・・そっかな。」そう言われても・・・・背中で悩んでいる潤に苦笑し、
「ま、桃花ぐらい・・・とまでは言わないケドよ?」言いながら「内緒だぞ!!」念を押す悟浄。
――――――そんなに恐いんなら、言わなきゃイイのに・・・。笑ってしまう。

『確かに、“いい男”だよね~。』改めて考える。背も高いし、力強い。大きな背中に安心する。

「ね、悟浄ってさ。恋人とか作らないの?」「なってくれんの?」・・・すかさず言うかぁ?
クックッと悟浄が笑いながら、
「悪りぃ悪りぃ。潤ってば売約済みだもんな。俺の条件反射みてーなモンだから。」
「条件反射って・・・・。」流石だよ、エロ河童!!

「やっぱ俺みてーなイイ男が一人だと、不思議ってワケ?」「ま、真面目に聞いてるんだけど。」
「・・マジメに・・かぁ。」 暫しの沈黙。『なんか・・気まずい?』少し不安になった時、

「俺って“アイ”とか何とか、判んねーんだわ。」相変わらず軽い口調のまま、話し出す悟浄。
「そう・・なんだ。」シ、シリアスになって来ちゃった!!
「女は向こうから寄って来るし?
生い立ちが不幸チックだからサ、誕生日もメデテーとか思ったコトなかったのよ。」
そう・・・そうなんだよねぇ。ああああ!!どうしようぅ!!

「でもな、今はコレでもいっか。とか思っちゃってんのよ。アイツらと居たら退屈なんかしねーし。
桃花は脳天気な顔で“誕生日オメデトー!!”とか言うし。下らない過去に何か拘ってる方が
ツマンナイっしょ?ま、今は旅の途中だから決まった女なんか作れねーけど・・そのうち、なv」

「そっか・・・。」ホッとした。うん!それでこそ“勝手に最遊記”だっ!じゃ、ついで(?)に、
「桃花ちゃんのコト、好き?」聞いてみたかったんだよねー!「・・・恐いコト言うなよ。」
「ええーっ!?仲、いいじゃん!」「あー・・そりゃな。仲間だし、気は合うし。でもなぁ。」
・・・・・・・・・・・・暫しの沈黙。 「色気、足りねーから・・・。」結局ソレかいっ!!

「って冗談は置いといて・・・アイツとは悪友でイイのヨ。アイとか判ンねーって言ったろ?
本気で誰かを・・っていう自信もねーし?恋人とかっていう関係って、いつかは終わりになるジャン。
結婚もそうだし。だったらいつ終わるか判んねー関係より、一生つき合える悪友で居たいんだわ、俺。」

尤も・・・・恋愛感情自体、無いんだケド。そう言って笑う悟浄に、「悟浄ってば臆病?」ツイ、本音がっ。

「ぅわっ!キッツイなー潤!だからサ?羨ましいっての!一人の男に飛び込める潤って、
つくづく・・・幸せ者ジャン。な?」

悟浄の言葉に――――――夕日に負けないぐらい、赤く顔を染めた。


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